I told you a lie

他愛もない日記や感想文

「夜明けのすべて」は(当事者として)救いにも絶望にもなる

近所の梅が咲いていて、ああ春めいて来たなあと思うこの頃。

緩やかに精神状態が良くなってきて、またそれからも春を感じる。で、夏がくると体調がガタガタになるんですが……。

仕事はビックリするほど暇。やることがないのもあるし、もはややる気も出ないから適当に仕事してて、だから自主的な暇といえばそうなんですけど。

 

 

さて、先日「夜明けのすべて」を観てきた。いやー本当に素晴らしい映画でした。少しザラッとした画も、優しいBGMも、寄り添うような語りも、すべてが暖かかった。

そして何より、主人公2人が恋愛関係にならないところが最高に良い。妙にリアルな仲のいい同僚って感じで、とても好感が持てた。

 

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今回はサクッと気に入った部分だけ感想を書きます(すぐ長文になるから)

 

私は本作の藤沢さんと同じくらいPMSが酷くて、しかもピルが飲めないというのも同じ。だからこそ適当なPMS描写をしていたら嫌だな、とか、恋でPMSが治りました!とかの落ちだったら辛いな、と思っていたのだが、PMSという病にキチンと向き合った作品だった。

人生で初めて、自分自信が当事者である映画を観たかもしれない。自分が苦しんでいることを真摯に描いてもらえることが、こんなにも救いになるなんて知らなかったな。

 

本作の冒頭はとてもセンセーショナルなんだけど、実はすごくリアルだと思う。コップの水が溢れるように、辛いことやしんどいことが閾値を超えてしまったら、自分もああなってしまう。

傘くらいさせば?と思うかもしれないけど、折りたたみ傘を袋から出す行為にすらイライラして、傘を投げつけて、そのまま座り込んでしまう。

身分証がすぐ出てこないだけですごく辛くてイライラして、カバンの中身全部ぶちまけちゃうよ。(ちなみに私も似たようなことは経験があります)

しばらくすると気分が落ち着いて、自分が情けなくて、別ベクトルの落ち込みが発生する。PMSとはそういう病気。

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会社の人にだって、そんなこと言いたい訳じゃないのに、些細なイライラをぶつけてしまって……。そして自己嫌悪。

PMSって、閉経するまでほぼ毎月絶対あって、更年期になったらもっと酷くなるのかなとか不安になる。私も藤沢さんも20代で、恐らく後20~30年は苦しみ続けなければならない。

 

だからこそ、物語の序盤にある、パニック障害で苦しむ山添くんに言われる「え、違いますよね?」が重くのしかかるというか……。PMSってたしかにただの情緒不安定って言われてしまいかねない病気だし、パニック障害みたいに目に見える弊害があるわけではないけれど……。

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私なら心がポッキリ折れちゃいそうな発言だったのに、藤沢さんはその後も山添くんを(同僚の範囲内で)フォローしている。彼女の「人に何かをあげることを躊躇わない」という美点が、うまく合致して、2人の歯車がちょっとずついい方向に回りだす。

 

私がこの映画を素晴らしいと思ったのが、2人とも映画が終わるまでに病気が治ることはないし、2人の関係性が大きく変化することもなかったという点。

恋に落ちたとて、パニック障害PMSも治らない。どちらも中長期的に付き合っていく病だし、じわじわと病気との距離感がわかってくるような、そういう類のものだと思う。

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だからこそ、2人が同僚の垣根を超えることなく、支え合うというよりは、理解し合うことで、ちょっとだけ病気に対する気の持ちようが変わった感じがした。

あと、藤沢さんが実家に戻った後、この2人はもう多分二度と会わないかもな~って感じがして良い。会うとしても会社に挨拶で……とかで、2人でお茶とかなさそう。

でもたまに思い出して、あの時の優しい時間が人生の支えになるんでしょう。そういうのってあるよね。

 

クライマックスの、プラネタリウムでの朗読も良い。もうこの世にはいない人が、今生きている人たちをそっと鼓舞してくれる。

人との関わりはすごく色々な形があって、でもみんな夜明けを待って藻掻いているのかもしれないな。

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邦画には珍しく、まだまだ公開しているようで、とても嬉しい。たくさんの人に見てほしいものです……。ゴジマイ見てる場合じゃないっすよ

私は人間の愚かさや暴力性を描いた映画も大好きだけど、こういう分かりやすい悪人がいなくて、みんなそれぞれの人生を生きてるんだなと思えるような映画も好き。

支えられなくても、理解しあうことで救われることもある。頑張って夜明けを待たねばね。

 

耐え難いことも多々あるけれど、頑張って生きていきましょう。