I told you a lie

他愛もない日記や感想文

「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」を読んだ

最近自分の中でエッセイブームが来ている。私は結構激情型なので、自分の考えを言語化して整理していかないとバーーンっとなってしまう。

エッセイというのは、その人の考えや思ったこと、感情がきちんと言語化されているので、「あの時、すごく辛い!と思ったのは、こういうことだったんだな」とか「今、モヤモヤしているのは、この感情に近いな」とか、自分と照らし合わせていくことで、自己理解にとても役立っている。

ただ、いわゆる「逆ツボ」なものも少なくない。この手のエッセイを読むともっと気分が落ち込んで抜け出せなくなるので、読むものはよくよく精査しないといけない。

 

 

そんな中で、今まさに悩んでいることが本になってる!というほどに感情移入してしまったのが、大木亜希子さんの「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」である。泣きながら読んだ。

大木さん自身の28~30歳までの藻掻きを文章にされているのだが、もう悩みとかがまったく同じ!もちろん私は元アイドルではないので可愛くもないし、人生に詰んだ!と言えるほどではないのだが(悪手ばかり選んではいるが)。

自分が停滞している気がして、空回りして、でも休むのも怖くて。好きでもない男のステータスだけ見て「ノルマ飯」するのは果たして生産的なのだろうか?という問いには目をつぶる。スケジュールが真っ黒に埋まっている方が幸せ。良い男を捕まえて、さっさと「ご報告」できれば人生上がり。

という、若くてキレイなうちになにか結果を残さなきゃいけないという、ある種の脅迫観念に突き動かされて、最終的には動けなくなってしまう。たぶん私もこのまま行くと足が動かなくなると思うので、こうやってエッセイを読んで自省している訳だが……。

 

またこの手の本だと、大体「理解ある彼くん」という、マジカル・ニグロというかフェアリーテイル・ゲイというか、まあそういう感じの男が出てきて、主人公の悩みをまるっとなかったことにしてくれるのだが、本書ではその手の男は全く出てこない。もちろん同居する「おっさん」であるササポンはマジカルおじさんではあるが、彼は大木さんの悩みを解決はしない。

私は「自分の悩みは自分で解決するしかない」と強く思っているので、「理解ある彼くん」が出てくる物語を憎んですらいる。そんな都合よく自分を支え、救い、守ってくれる存在、みんな欲しいよ。でもその「彼くん」がいないからこんなに病んでるんだが!?と思う。また、大木さんや私のようなプライド高め女子は、簡単に「彼くん」に心を許すことはできないので、結局自分で頑張るしかないのよね。

 

本書では、大木さんが過去最も好きになった男をなんとか、無理くり、ちょっとだけ清算する過程が描かれていて、身につまされるようだった。

昔読んだ本に、「叶わなかった恋は止める術を持たず、ずっと好意の蛇口が開きっぱなしなんだよ」というような一節があった。まさにそうで、私も死ぬほど好きな男がいるが、告白とかでピリオドを打つこともできず、ずーーっと好きな気持ちが垂れ流されている。大木さんもそうなんだろうな。

この手の「好き」は簡単には消えないので、大木さんがなんやかんや最後までその男をちょくちょく思い出しているのが、生々しくてよかったです。思い出の品を捨てたとて、そんなすぐ切り替えらんないからね!

 

大木さんが友達の結婚を素直にお祝いできないことに自己嫌悪したり、お酒で大失敗したり、体調不良でも気軽に連絡できる相手がいなくて泣いちゃったり、もう全部が私と同じ。ある意味、我々の悩みはとても陳腐で、ありふれたものなのかもなーと思ったり。

本書はもちろん万人が面白く読める作品だと思うけれど、人生迷走中のアラサー女性はすごく刺さるのではないだろうか。いやー本当にオススメです。

 

 

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